台湾有事ニュース(2025年12月26日)

  

記事1:頼清徳総統、2030年までに国防予算をGDP比5%に引き上げる目標を表明

 抑止力の抜本強化:頼総統、国防予算「GDP比5%」を目標に設定—実力による平和を強調

1.過去最大規模の防衛力整備への決意

台湾の頼清徳総統は12月26日、訪台した河野太郎元外相率いる日本の国会議員団と会談し、2030年までに台湾の国防予算をGDP(国内総生産)比で5%にまで引き上げる意欲的な目標を表明しました。頼総統は「平和は侵略者の善意に頼ることはできず、実力こそが唯一の平和の保証だ」と述べ、中国の軍事的圧力に対抗するためには、自衛能力の飛躍的な向上が不可欠であるとの認識を示しました。この目標が実現すれば、台湾の防衛力は装備の刷新、非対称戦力の拡充、そして兵士の処遇改善に至るまで、文字通り「国家の要塞化」を加速させることになります。

2.日台米の集団安全保障構造への布石

今回の表明は、米国が新国家安全保障戦略で台湾防衛を優先事項としたことや、日本国内での防衛議論の高まりとも呼応しています。頼総統は、国防予算の増額を通じて、日本を含む民主主義陣営との安全保障連携をより実質的なものにする意向を伝え、日台経済連携協定(EPA)の締結やCPTPP加盟への支持も併せて要請しました。軍事専門家は「GDP比5%という数字は、台湾がもはや自国の防衛を他国任せにせず、第一列島線の防波堤としての役割を主体的に担うという強い決意の表れだ」と分析。この方針は、中国に対する強力な心理的・物理的抑止力として機能することが期待されています。

まとめ: 頼総統は、2030年までの国防予算GDP比5%到達を目標に掲げ、自衛能力の抜本的強化を図る姿勢を鮮明にしました。侵略を思いとどまらせる「実力」を重視し、日米等との安全保障・経済両面での連携を深めることで、台湾海峡の現状維持と地域の安定を確固たるものにする狙いです。

出典: 風傳媒(Storm Media) 参考サイトのアドレス: https://japan.storm.mg/articles/1090722


記事2:行政院、公職者の訪中制限を強化—国家の尊厳と安全を保護

 浸透への防壁:行政院、総統・副総統経験者らの訪中制限を強化—国家の尊厳を損なう行為を禁止

1.退職後の高官に対する厳格な管理

台湾の行政院(内閣)は12月26日、公職者の訪中に関する制限を強化する「台湾地区・大陸地区人民関係条例」の改正案を閣議決定しました。この改正案は、特に総統や副総統などの重要職務を経験した者が、退職後に中国を訪問した際、国家の尊厳を損なう儀式への参加や、中国共産党の主張に同調するような行為を厳格に禁じるものです。違反した場合には、年金の支給停止や多額の過料が科されることになります。これは、中国が退職した高官を政治工作(統一戦線工作)に利用し、台湾国内の世論を分断させようとする試み(シャドー・ウォー)に対抗するための法的な防衛線となります。

2.「武力統一の鼓吹」を過料の対象に

改正案には、中国が主導する「武力統一」を公然と支持・鼓吹する行為に対し、最大で約500万台湾ドル(約2300万円)の過料を科す国家安全法改正案も含まれています。行政院の李慧芝報道官は「国家の安全と社会の安定を守るためには、言論の自由を尊重しつつも、国家の存立を脅かす行為には明確な一線を引く必要がある」と述べました。有事の際、内部からの裏切りやプロパガンダによる攪乱は、正規軍の侵攻以上に致命的な脅威となります。今回の法改正は、台湾社会が外部の圧力に対して一枚岩であり続けるための「内なる防衛」を強化する実効性のある一歩として、世論からも注目されています。

まとめ: 行政院は、重要公職者の訪中制限と、武力統一支持への厳罰化を決定しました。これは、中国による統一戦線工作や内部からの情報・世論操作を防ぎ、国家の尊厳と安全を法的に守るための措置です。台湾は物理的な防衛に加え、法的・精神的な防衛網を構築し、有事への強靭性を高めています。

出典: フォーカス台湾(中央通訊社) 参考サイトのアドレス: https://japan.focustaiwan.tw/politics/202512260008


記事3:外交部、ホンジュラスでの「親台派」大統領選出を尊重—国交回復への期待

外交戦の逆転:外交部、ホンジュラス大統領選でのアスフラ氏当選を尊重—断交国との関係改善を模索

1.台湾との国交回復を掲げる新リーダー

台湾外交部(外務省)は12月26日、中米ホンジュラスの大統領選において、台湾との国交回復を公約に掲げていた野党・国民党のナスリ・アスフラ氏が当選したことを受け、「民主主義の手続きで選ばれた新たなリーダーを尊重する」との声明を発表しました。アスフラ氏は選挙戦中、現在のシオマラ・カストロ政権による中国との国交樹立以降、経済状況が悪化したことを批判し、「台湾との外交関係があった時の方が百倍良かった」と公言してきました。台湾にとって、中国による「外交的封じ込め」の中で、一度失った国交を回復させる可能性があるこの選挙結果は、国際社会における孤立を防ぐための極めて重要な外交的転換点となります。

2.「実用外交」と「栄邦計画」の推進

外交部は、アスフラ氏に対し、いかなる前提も設けずに積極的に交流していく方針を伝えました。林佳龍外交部長は、友好国との関係を強化し、相手国の発展を促す「栄邦計画(友好国繁栄プロジェクト)」の下で、実務的な協力を深める意向を示しています。米国もアスフラ氏の当選を承認しており、中国による中南米への浸透を阻止したい日米台の思惑が一致する形となっています。有事において、国際社会での承認と支持は台湾の生存に直結します。ホンジュラスとの関係改善は、中国が進める「一つの中国」原則の押し付けを打破し、台湾の主権を国際的に再確認させる強力なメッセージとなることが期待されています。

まとめ: 外交部は、ホンジュラスでの親台派大統領の選出を歓迎し、国交回復を含む関係改善に前向きな姿勢を示しました。これは中国の外交圧力に対する重要な巻き返しであり、台湾が国際的な承認を死守するための大きな一歩となります。実務協力を通じた「実用外交」の深化が、有事の孤立を防ぐ外交的抑止力となります。

出典: 台湾国際放送(Rti) 参考サイトのアドレス: https://www.rti.org.tw/jp/news?uid=3&pid=183136


記事4:台北メトロ、無差別襲撃を想定した大規模訓練を実施

社会のレジリエンス:台北メトロ、刃物男による襲撃を想定した救助演習を実施—警察・消防との連携確認

1.公共空間における「非正規戦」への備え

2025年12月26日、台北メトロ(MRT)の駅構内において、刃物を持った男が乗客を次々と襲撃する事案を想定した大規模な合同訓練が実施されました。近年、台湾では公共交通機関での無差別襲撃事件や不審事案が相次いでおり、有事の際、中国工作員による社会パニックの誘発が懸念されています。訓練には警察、消防、メトロ職員に加え、周辺の医療機関も参加。駅員が盾や刺股(さすまた)を用いて犯人を制止する手順や、パニックになった乗客を安全に地上へ誘導する動線の確保、そして負傷者のトリアージ(選別)と搬送が、実戦に近い緊張感の中で行われました。

2.「全民防衛」を日常の安全へ反映

内政部は、こうした演習を通じて市民の危機意識を高め、パニックを最小限に抑える「心理的防衛」の重要性を説いています。演習を指揮した警察幹部は「有事において市民を最も近くで守るのは、その場にいる職員と、訓練を受けた市民自身である」と強調。台北メトロでは全車両への警備員配備やAI監視システムの強化も進めており、ハード・ソフト両面での「隙」をなくす努力を継続しています。日本人読者にとっても、台湾が日常の安全確保を有事対応の延長線上として捉え、社会全体の強靭性(レジリエンス)を絶えずアップデートしている姿勢は、現代の安全保障における一つの模範となっています。

まとめ: 台北メトロは、無差別襲撃を想定した警察・消防合同の訓練を実施し、公共空間での有事対応能力を強化しました。工作員による社会混乱を狙った「非正規戦」への警戒が続く中、実戦的な演習を繰り返すことで、社会のパニックを防ぎ、市民の命を守る「全民防衛」の基盤をより強固なものにしています。

出典: フォーカス台湾(中央通訊社) 参考サイトのアドレス: https://japan.focustaiwan.tw/society/202512260007


記事5:海巡署、金門海域での中国海警船による干渉が「常態化」と警告

境界のせめぎ合い:海巡署、金門周辺での中国海警船の活動を監視—法執行を盾にした圧力に抗議

1.「法の武器化」による現状変更の試み

台湾の海洋委員会海巡署(コーストガード)は12月26日、金門島周辺の制限・禁止水域において、中国海警局の船舶が「法執行」を口実に侵入し、台湾側の船舶に対して干渉を行う行為が「完全に常態化している」との警告を発しました。中国側は、今年2月の事故以降、金門周辺での管轄権を一方的に主張し、海軍力とは異なる「警察力」を用いることで、台湾の主権を段階的に切り崩す「グレーゾーン戦術」を展開しています。海巡署は「中国側の恣意的な管轄権主張は地域の平和と安定を著しく損なうものであり、国際法に照らしても断じて容認できない」と強く抗議しました。

2.24時間体制の監視と現場での対決

海巡署は、中国海警船の動きを24時間体制で監視し、侵入が確認されれば即座に巡視船を派遣して進路を遮るなどの対応を継続しています。現場では、数で勝る中国側に対し、台湾の小型巡視艇が巧みな操船で主権を死守する緊迫した状況が日常的に発生しています。海巡署は「我々は挑発せず、しかし一歩も引かない」との基本姿勢を堅持。また、海底ケーブルの切断を狙った動きに対しても警戒を強めており、海上のインフラ保護を有事の通信確保の要と位置づけています。離島周辺でのこの「静かなる戦い」は、台湾の防衛意志を試す最前線であり、海巡署の毅然とした対応が抑止力の柱となっています。

まとめ: 海巡署は、金門海域での中国公船による干渉の常態化に対し、強い警戒と抗議を表明しました。警察力を用いた「グレーゾーン戦術」による主権侵害に対し、海巡署は現場での物理的な対抗措置を徹底。離島周辺の境界線を死守することで、中国による段階的な現状変更を断固として拒否し続ける姿勢を鮮明にしています。

出典: フォーカス台湾(中央通訊社) 参考サイトのアドレス: https://japan.focustaiwan.tw/cross-strait/202512260001


記事6:立法院、総統弾劾案の審査日程を公表—国内政治の緊迫と外部圧力

 内政の嵐:立法院、頼総統弾劾案の表決を来年5月に実施へ—審査会に総統招致の可能性

1.野党主導による憲政史上初の動向

台湾の立法院(国会)で最大野党・国民党の羅智強書記長は12月26日、頼清徳総統に対する弾劾案の具体的な審査日程を公表しました。来年1月から審査手続きを開始し、頼総統の就任2周年前日にあたる5月19日に記名投票を実施する方針です。弾劾案の提出は、頼政権が進める急進的な国防予算増額や対中強硬姿勢が「国家を危険に晒している」とする野党側の主張に基づいています。立法院は総統に対し、国政報告および審査会への出席を求める予定であり、台湾国内の政治的対立は、憲政史上かつてない緊迫した局面を迎えています。

2.有事下における「社会の分断」のリスク

この内政の混乱は、中国による「認知戦(世論操作)」の格好の標的となっています。中国側は親中派メディア等を通じて「頼政権の強硬策が弾劾を招いた」というナラティブを拡散し、台湾国民の政府不信を煽る工作を強めています。軍事専門家は「有事において最も恐ろしいのは内部からの崩壊だ」と警告し、民主主義の手続きである弾劾議論が、国家の防衛意志を弱体化させるツールとして悪用されないよう注意を促しています。頼総統は「法に基づき誠実に対応するが、国防と主権の強化に妥協はない」との立場を崩しておらず、来年前半は内政の混乱と外部の圧力が交錯する、台湾にとって極めて困難な時期となると予想されます。

まとめ: 立法院は、頼総統弾劾案の来年5月の表決に向けた日程を公表しました。野党によるこの動きは内政を揺るがすだけでなく、中国による認知戦に利用されるリスクを孕んでいます。国防強化を巡る国内の激しい対立が、有事下の団結力にどのような影響を与えるかが、今後の台湾の命運を分ける重要な焦点となります。

出典: 風傳媒(Storm Media) 参考サイトのアドレス: https://japan.storm.mg/articles/1090594