台湾有事ニュース(2025年12月19日)

  
 記事1:トランプ米大統領、「国防権限法」に署名—対台軍事支援10億ドルが確定

 同盟の深化:米「2026会計年度国防権限法(NDAA)」成立—台湾への軍事援助10億ドル超を明記

1.無人機協力と即応戦力への大規模投資

米国政府は、2026会計年度の国防予算の大枠を定める「国防権限法(NDAA)」が成立したことを発表しました。この法律には、台湾に対する最大10億ドルの対外軍事融資(FMF)および武器引き渡しを迅速化する条項が含まれています。特に注目すべきは、米台間での「無人機共同生産・開発」が明確に打ち出された点です。中国軍の物量に対し、安価で大量の無人機(自爆型ドローンを含む)で対抗する「非対称戦力」の構築を加速させる狙いがあります。台湾国防部は、「米国の強力なコミットメントは、台湾海峡の平和を維持するための最大の後ろ盾となる」と歓迎の意を表明しました。

2.地域封鎖リスクへの警鐘と米国の抑止戦略

今回の法案成立の背景には、中国が他国の紛争を口実に台湾周辺を封鎖するシナリオへの懸念があります。米国の専門家は「中国が将来的にウクライナや中東などの紛争を利用し、台湾包囲を正当化する口実を作る可能性がある」と指摘しており、NDAAにはそうした事態を未然に防ぐための地域同盟国(日本、フィリピン等)との協力強化も盛り込まれました。頼清徳総統は「実力だけが真の平和をもたらす」と述べ、国防予算をGDP比3%に近づける方針を再確認。米国の支援を梃子に、台湾独自の防衛インフラ整備と国際的な集団安全保障体制への組み込みを急ぐ姿勢を鮮明にしています。

まとめ: 米国で2026会計年度国防権限法(NDAA)が成立し、台湾への最大10億ドルの軍事支援と無人機分野での協力が確定しました。これは中国の封鎖リスクに対抗し、非対称戦力を強化するための重要な法的根拠となります。台湾政府はこれを歓迎し、「実力による平和」を目指して軍備増強と国際連携をさらに加速させる方針です。

出典: 中央通訊社(CNA) 参考サイトのアドレス: https://www.cna.com.tw/news/aipl/202512190001.aspx


記事2:立法院、次世代「護国神山」を目指す無人機連盟を発足

産業防衛:立法院、「次世代無人機産業連盟」を設立—軍民融合による国防産業の自立化へ

1.半導体に続く「第2の護国神山」の育成

台湾の立法院(国会)において、超党派の議員による「無人載具(無人機・自動運転車両)産業連盟」が発足しました。この連盟は、台湾が世界に誇る半導体・電子部品の技術力を背景に、無人機産業を半導体に次ぐ「護国神山(国家を守る重要産業)」へと育てることを目的としています。有事において、ドローンは偵察だけでなく攻撃の主力となるため、自国での安定的な生産体制確保は喫緊の課題です。連盟は、政府に対して無人機関連の規制緩和や、中小企業の技術開発に対する大規模な資金援助を求める方針です。これにより、軍事用だけでなく商用ドローンの競争力も高め、経済と国防の相乗効果を狙います。

2.「脱中国(Red Supply Chain)」サプライチェーンの構築

無人機産業における最大の課題は、部品の中国依存からの脱却です。中国製の部品やソフトウェアに依存することは、有事の際の供給停止やサイバー工作のリスクを伴います。連盟は、米国や日本、欧州諸国と連携し、信頼できる国家間でのサプライチェーン(クリーン・ネットワーク)の構築を推進します。これは、米国のNDAAで示された「米台共同開発」とも密接にリンクする動きです。台湾が独自の高性能ドローンを大量生産できる能力を持つことは、侵攻側に対して「高価なミサイルで安価なドローンを撃ち落とさせる」という経済的な疲弊を強いる戦術を可能にし、防衛の質を根本から変える可能性を秘めています。

まとめ: 立法院は、無人機産業を「次世代の護国神山」と位置づける産業連盟を発足させました。半導体技術を活かした軍民融合の推進と、中国製部品を排除した信頼できるサプライチェーンの構築を目指します。この動きは、国防の自立化を進めると同時に、非対称戦力としての無人機活用を産業面から支える重要な一歩となります。

出典: 経済日報(Economic Daily News) 参考サイトのアドレス: https://money.udn.com/money/story/7307/7652000


記事3:外交部、米国の新国家安全保障戦略における「台湾優先」を高く評価

価値観の同盟:外交部、米国の新安全保障戦略が「台湾防衛の優先順位」を明記したことを歓迎

1.「集団安全保障」の中核としての台湾

台湾外交部は、米政府が発表した最新の「国家安全保障戦略(NSS)」において、台湾の安全がインド太平洋地域の平和と安定に不可欠であり、現状変更の試みに対して断固たる姿勢で臨むことが明記されたことを高く評価しました。今回の戦略文書では、特に日本や韓国といった同盟国との「多角的な安全保障協力」の中に台湾防衛が組み込まれたことが特徴です。外交部は、「これは台湾有事がもはや一地域の懸念ではなく、民主主義陣営全体の死活問題であることを国際社会が再認識した証左である」との談話を発表しました。この動きは、台湾が国際的な安全保障の枠組みの中でより中心的な役割を果たすことを後押しします。

2.一方的な現状変更への反対と現状維持の責務

外交部は同時に、頼清徳総統が提言した「平和の4つの支柱(国防力の強化、経済安全保障、民主主義陣営との連携、現状維持の堅持)」が米国の戦略と完全に合致していることを強調しました。中国による力や脅迫を通じた一方的な現状変更には反対しつつ、台湾は責任ある国際社会の一員として、地域の現状を維持するために最大限の努力を払う姿勢を再確認しています。外交部は、日本を含む志を同じくする国々に対し、安全保障分野だけでなく、貿易やデジタル分野での協力をさらに深めるよう呼びかけています。米国の強力な支援を背景に、台湾は「自立した民主主義の砦」としての地位を確固たるものにしようとしています。

まとめ: 外交部は、米国の新国家安全保障戦略が台湾防衛を優先事項として明記したことを歓迎しました。台湾有事が日米韓を含む多角的な協力枠組みの中で扱われることの重要性を指摘し、頼政権の「平和の4つの支柱」との合致を強調。民主主義陣営との連携を深め、地域の現状維持に向けて責任を果たす姿勢を改めて示しました。

出典: 自由時報(Liberty Times) 参考サイトのアドレス: https://news.ltn.com.tw/news/politics/breakingnews/4525000


記事4:国防部、現役将校のスパイ行為を「国家への裏切り」と強く非難

 内部綱紀の粛正:国防部、中国への機密漏洩容疑で現役将校2名を起訴—「絶対的な忠誠」を再徹底

1.巧妙な浸透工作と機密保持の危機

台湾国防部は、機密情報を中国側に提供した疑いで現役の将校2名が検察当局によって起訴されたことを受け、これを「国家と国民に対する重大な裏切り行為」として強く非難する声明を発表しました。捜査によると、被告らは中国の工作員から金銭的誘惑や海外旅行などの接待を受け、部隊の配置図や緊急時の連絡網などの機密資料を漏洩させていた疑いがあります。国防部は、「中国共産党はあらゆる手段を用いて台湾の軍内部に浸透し、防衛力を内部から弱体化させようとしている」と指摘。機密保持体制の不備を認めるとともに、全軍に対して防諜意識の徹底と、不審な接触があった場合の報告義務を再強化するよう指示しました。

2.防諜体制の近代化と「心理的防衛」の強化

国防部は、物理的な軍備増強だけでなく、内部のスパイ摘発を「第2の戦場」と位置づけています。今回の摘発は、軍内部の監視システムと司法当局の連携強化による成果ですが、国防部はさらなる対策として、重要な情報にアクセスする人員に対する適格性審査の厳格化や、デジタルデータの追跡システムの導入を検討しています。また、兵士の士気を守るための「心理的防衛」教育も強化。中国のプロパガンダや誘惑に屈しない強い倫理観を育むことが、最先端のミサイルを配備することと同等に重要であるとの認識を示しています。国防部は「裏切り者は一人も逃さない」と宣言し、軍の純潔性を守るための断固たる措置を継続する方針です。

まとめ: 国防部は、中国に機密を漏洩した現役将校の起訴を受け、強い非難と綱紀粛正の徹底を表明しました。金銭誘惑などによる内部浸透工作への警戒を強め、適格性審査の厳格化やデジタル監視の導入など防諜体制の近代化を推進。物理的防衛と同様に「心理的防衛」を重視し、軍内部の忠誠心と情報の保全を再強化する姿勢を鮮明にしました。

出典: 青年日報(Youth Daily News) 参考サイトのアドレス: https://www.ydn.com.tw/news/newsInsidePage?chapterID=166200


記事5:中央銀行、有事の金融安定化に向けた「緊急外貨調達計画」を策定

経済の防波堤:中央銀行、有事の資本流出や為替急変動に備えた「金融レジリエンス計画」を更新

1.大規模な資本逃避を想定した流動性確保

台湾の中央銀行は、台湾海峡の緊張が高まった際の金融市場の混乱を最小限に抑えるため、最新の「金融レジリエンス(回復力)計画」を策定しました。この計画の核心は、有事の際に予想される大規模な資本流出(キャピタルフライト)や台湾ドルの急落に対処するため、海外の主要な中央銀行とのスワップ協定(通貨交換)の拡大や、緊急時の外貨調達ルートの多層化です。台湾は世界有数の外貨準備高を誇りますが、封鎖事態においては物理的な送金や決済が困難になる恐れがあります。中央銀行は、デジタル通貨技術や秘匿性の高い通信網を活用し、金融インフラが攻撃を受けても国内の決済システムが麻痺しない体制の構築を急いでいます。

2.「経済的安全保障」としての通貨安定

中央銀行は、通貨の安定が国民の安心感に直結し、有事の際の社会的なパニックを防ぐ最大の要因であると考えています。計画には、ATMの現金枯渇対策や、デジタル決済の冗長性確保も含まれています。また、主要な海外投資家に対し、台湾の金融システムの堅牢性を定期的に説明し、信頼を維持するための広報活動も強化しています。中国による「金融面での圧力(サイバー攻撃による銀行システムの停止など)」も想定内であり、高度なサイバーセキュリティ防御を全金融機関に義務付けています。台湾の経済的自立を守るためには、軍事的な抑止力と同様に、揺るぎない金融の「防波堤」を築くことが不可欠であるという認識が、政策の根幹にあります。

まとめ: 中央銀行は、有事の金融混乱を防ぐための「金融レジリエンス計画」を更新しました。外貨調達ルートの多層化や資本流出対策、決済システムの冗長性確保により、攻撃下でも金融機能を維持する体制を整えています。通貨の安定を社会不安防止の鍵と捉え、サイバー防御を含めた強固な金融の「防波堤」を構築することで、国家の経済安全保障を支えます。

出典: 聯合報(United Daily News) 参考サイトのアドレス: https://udn.com/news/story/7239/7653000


記事6:内政部、全国の消防・警察による「大規模災害・戦災」共同演習を実施

 民間防衛の最前線:内政部、空爆やインフラ破壊を想定した警・消・民三者合同「戦災救助演習」を挙行

1.「戦場」と化した都市部での救命活動

台湾の内政部(総務省に相当)は、全国の主要都市において、空襲や工作員による重要インフラ破壊を想定した大規模な戦災救助演習を実施しました。これまでの災害訓練とは異なり、演習では「通信が遮断され、道路が寸断された戦場に近い環境」が設定されました。警察は治安維持と避難誘導、消防は火災鎮圧と負傷者救護、そして地域の民間防衛組織(ボランティア)は物資の配分や応急処置を分担。ドローンを用いた被災状況の把握や、緊急用移動通信基地局の設営など、最新技術を駆使した連携が確認されました。内政部長は「有事において市民を最も近くで守るのは、制服を着た警察・消防官と、訓練を受けた市民自身である」と演説しました。

2.「全民防衛」をスローガンから現実に

今回の演習の最大の特徴は、民間人の積極的な参加です。事前に登録された民間防衛組織のメンバーは、負傷者のトリアージ(選別)や、止血帯を用いた応急処置を実践。内政部は「有事における救助活動は、プロの力だけでは到底足りない」として、一般市民への教育普及を最優先課題としています。また、演習には日本や欧州の防災・防衛関係者も視察に訪れており、台湾の民間防衛体制が国際的にも注目されていることを示しました。パニックを防ぎ、一人でも多くの命を救うためには、平時からの「本気の訓練」が不可欠です。台湾全土で展開されるこの動きは、国家としての強靭性を社会の末端まで浸透させる、最も根源的な防衛努力と言えます。

まとめ: 内政部は空爆等を想定した警察・消防・民間の合同戦災救助演習を実施しました。通信遮断下での連携やドローン活用を確認し、民間人の救護能力向上にも重点を置いています。有事における「共助」の重要性を説き、実践的な訓練を通じて社会全体の強靭性を高めることで、市民の命を守る民間防衛体制の構築を現実のものとしています。

出典: 華視新聞(CTS News) 参考サイトのアドレス: https://news.cts.com.tw/cts/general/202512190088.html